車内に炉端のあるディーゼルカーでカーブに揺られること30分,茂住に着いた.
大まかな場所は判っていた.駅を出て川を渡り,国道を横切ると集落,その裏が山になっていて,そこを上がって行くと事業所がある.いつものことだが細かな道順までは把握していないので,とりあえず上に行きそうな階段があったのでそれを昇る.階段に沿っていわゆる炭住らしき家屋が見えるので間違いないだろう.茂みの中を朽ち落ちそうな急な石の階段を昇る.何度か踊り場を折り返し,漸く先程下から見えた事業所の建物がある場所に辿り着いた.昔の写真(*04)で見覚えのある風景だ.広場があり,左手の崖の上には選炭場らしき建物,そして鉱物を貨車に落とす台がある.勿論線路などないが,ここが旧神岡鉄道(*05)の茂住駅であったに違いない.写真には貨車を山の上に移動するためのインクライン(*06)も写っていたが,良く見ればそれらしき跡もある.
広場を通り,上に通じる車道があったのでそこを登る.大変な急坂で,大型車がここを上れるのかと思う程だ.前述の通りこの事業所も本来の操業を終えており,その処理のためのものだろうか,大量の水がその事業所から道を流れている.
急坂が一段落しようとした所で前方に木造の細長い建物が見える.さらに道を軌道と架線が横切っている.これが茂住坑の下部軌道と呼ばれる軌道である.軌道は右手の建物から左手の森に消えており,木造の覆いの中を山の中へと続いているようだ.右手の建物に入ってみる.建物の中は複線の軌道があり,ここから分岐して山の中へ続いている.複線の軌道にはバッテリー機関車や貨車・鉱車等が何両も留置してある.右の方に行ってみると,軌道は終点になり建物もそこが端のようだった.どうやら建物は軌道に沿って細長くなっている.枕木はあるのかも知れないが土に埋もれて見えず,レールも車両も錆が目立つ.建物も一部壁が破れていたりしている.何より恐ろしいのは,架線が自分の背の高さより少ししか上にない.見たところ軌道に関しては完全に運行を停止した訳ではなさそうなので,架線が通電している可能性は十分にある.故意に跳んだり手を伸ばしたりでもしなければ接触(*07)することはないが,以後注意して進むことにする.
軌道を戻り,反対方向へ行ってみる.程なく建物は終わり,ヤード(*08)とおぼしき場所に出た.レールが3線と機廻し線(*09)のようなものが1本,左手に事務所のような建物,右手は崖で,物置が数棟.レールは正面の工場と坑道に続いている.坑道は塞がれている様子はなく,奥には電灯の明かりも見える.
|
写真をクリックすると 拡大写真になります.
写真帖を見る
|
上の広場に置いてあった貨車.
|
ヤードの隅に置いてあったタンク車.錆びている.
|
作業車.
|
作業場.屋内にはバッテリー機関車等がいた.
|
坑道の入り口.右に見える作業場を挟んでもう1つある.
|