神岡探訪記


その5/2002年11月訪問(4)

 歩き出す我々.ここから30分歩いて目的地に着けなかったら引き返そうと友人は言った.辺りはだんだん暗くなっている.致し方ない.  筆者は後ろから付いてくる友人を気にしながらもかなりの早歩きで道を登った.雪に二条の轍ができている.
雪が降ってから誰かが車でここを登っている.それとは別に人と犬と思われる足跡もある.地元の猟師が山狩りにでも入ったのだろうか,ずっと続いている.道は木の枝や倒木等で状態は良くない.轍はまだ続いているが,誰が一体何の目的でどのような車両で入ってきたのか気にしつつ歩き続けた.また熊にも注意しなければならず,雪が木の葉に落ちる音にも一瞬驚かされる.
 友人の「あと10分」という遥か後ろからの声を聞きながらも更に歩き続ける.雪は多い所で10センチにもなっている.轍はいつの間にかなくなっていたが,人と犬の足跡は続いている.道の中央には積雪,両側は所々に雪解け水が溜まっていて,筆者の安いズックはたちまち浸水した.しかしそのようなことは些かも気にならず,薄情にも友人を後方に残したまま歩く速度は速くなる.というのも,木々の間から見える向こうの山と進行方向に見える地形から,何となく目的地が近いような気がしたのだ.友人の設けた制限時間はとうに過ぎている筈であったが,あと数百メートル先にあるであろう目的地を目前に帰る訳にはいかないと思い歩き続けた.
 道の左側の山肌にコンクリートの壁が現れた.近い.足早に積雪をものともせず進むと,やがてコンクリートの覆いが見えてきた.着いた.遥か後ろにいる友人が追い付くのを待ち,その先に進んだ.
 覆いを抜けると,3年振りの大津山の景色が広がった.今回は一面雪景色だが,以前と余り変化はないように思われた.物産店のある広場から先はずっと10〜15センチ程の雪に覆われ,足跡一つ付いていない.下からずっと続いていた人と犬の足跡もこの広場で引き返していた様子である.筆者達もあまり動くと危険なので,広場から向こう側や谷の下を眺めたりカメラを向けたりした.
 いつも広場の軌道に放置してある小さな台車は少し動かすと雪の上に乗り上げた.小屋をくぐって軌道沿いに数メート程歩いてみるが,確かこの先は軌道の下が空洞になっていたり少し崩落している箇所があった筈.もっと先に進みたい衝動を抑えた.
 辺りは静まり返り,時折雪が木の葉に落ちる音が聞こえるのみ.鳥さえもいない.友人が特に興味を示している谷下の住宅地は木々と雪に覆われ全容を見ることはできない.雪がなければ下に行く道を歩いて防火壁の下まで行ってみたかった.
 そうしているうち歩いてきた道の方に霧が掛かり始めた.辺りも更に暗くなり,雪も落ちてきている.実は車を降りた時に懐中電灯を持参するのを忘れてしまい,明かりといえば携帯電話の画面のみ.勿論そんな物が真っ暗な夜道で役に立とう筈もなく,後ろ髪を引かれる思いで引き返すことに.
 後ろを振り返りながら,次はいつ来られるか判らない大津山を眺めた.二人の進む先は木々の影になり早くも闇になっており,更に霧も濃くなっている.あと20分もすれば全くの闇になってしまうだろう.雪や石に足を取られながら足早に下り道を歩く.帰りは随分時間が長く感じ,車を乗り捨てた場所まで長い時間が掛かったように思えた.辛うじて辺りはまだ見えるが,足下は殆ど見えない.友人は何度もつまずいたり転びかけたりしている.筆者は山道に慣れているのでそういうことはなかったが,安い靴とあって足の裏は石を踏み続けたため大変痛い.
 車が見えてきた.辺りはもう真っ暗になっていた.一安心するがまだ終わった訳ではない.さっき登ってきた悪路を下りなければならない.崩落箇所も暗くなっている中でうまく通過しなければならない.落ちれば命はない.前回を思い出し,ローギアで慎重に,しかし轍や岩等に乗り上げたりタイヤを取られたりしてもそれを乗り越えられるだけの速度を保って走らなければならない.更に崩落している地点がどこだったかも注意深く見る必要がある.カーブの度にここではなかったかと慎重になる.
 崩落地点を何とか通過し,雪も消えた.しかし悪路は続く.やっと息を吐いたのは客車の置いてある場所に差し掛かった時だ.ここから先は普通の山道で心配はない.
 何事もなく国道に出て,そのまま松本から軽井沢に向かい,行きつけの焼肉店で安堵しながら料理を頬ばったのであった.帰宅したのは翌日3時を過ぎていた.
 ちなみに,悪路の影響で車に数々の支障が出た.オイル漏れ2件,給油管の留め金外れが3件.あれだけ床下を擦ったり打ったりしたのだから当然だ.しかし,運転席側の側窓がそれまで自動で閉めると一旦完全に閉まった後に勝手に半分程再び開いてしまっていたのだが,その症状がすっきりなくなっていたのである.走るのに支障はないものの修理すればそれ相当の費用がかかるので放っておいたのだが,やはり気にはなっていたので思わぬ収穫であった.
 いずれにしても今回は行けたことは確かだが満足できたとは言い難い.次回は来年の6月にでも再訪問を果たしたいと思う.
 最後に,今回様々な情報を提供してくだり,現地で快く迎えてくださった中田氏にお礼を述べたい.
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下大津遠景
下大津を望む.屋根に雪を冠した家屋が見える.
尾根
向こうの尾根を望む.下方に霧が出始めた.
入口
広場から見た入り口付近.どこが路肩か雪で判らない.
広場
物産のある広場から向こうを見る.ここから先は積雪のため危険.
道
大津山を後にする.辺りはもう暗い.人影は同行者.

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