神岡探訪記


その5/2002年11月訪問(3)

 神岡の街に入り,約束の15時にやや遅れて到着.地元出身の建築家で以前から神岡の写真を撮っておられる中田氏は先に到着して我々を迎えてくれた.挨拶をし,現在の状況を聞く.大津山には行けないことはないが車で目的地まで行くのは厳しいだろうとのこと.今日行くなら暗くならないうちに行くのがよろしかろうという.逆に言えば途中まででも車で,しかも今日行けるということだ.大津山に行くことさえできるかどうかと思っていた我々には大変な朗報だ.折角会いに来てくださった氏には申し訳ないことをしたが,15分程お茶を飲んだだけで我々は一刻の時間も惜しく大津山に向かった.氏も我々の目的を理解してくださり(残念ながら氏は仕事があるのでこの日の夜には自宅に戻られるため神岡を発たねばならなかった),地元での再開を約束して神岡の街を後にした.
 神岡の街から20分,見慣れた茂住の集落に到着した.国道沿いの道の駅で念のために車を点検した.何しろ大津山に最後に行ったのはもう3年も前のことで,その時の悪路を走った怖さの思い出だけが先に立って,正直それまでにも大津山に行くことを考えると不安であったのだ.前回は幸いにして無事に目的地まで車で辿り着けたが,その後林道は崩落等を繰り返しており,また山道には到底向いていない普通小型乗用車でどうやってこの悪路を登っていけるだろうか…などと不安が募る.
 しかしゆっくり考えている時間もない.先程は雲の隙間から陽差しさえ見えていた神岡の空は,再び雲に覆われて夕方のように暗い.時刻も実際に夕刻に近付いている.
 車の足回りを簡単に確認し,道の駅の向かいにある駐在所の脇の小道を入った.道は湿ってはいるもののこの時点では問題ない.相変わらず未舗装で石があちこちに転がってはいたが.
 何度かカーブを繰り返し勾配を登ると道端に客車が置いてある地点に差し掛かる.ここまでなら今までにも来ることができた.問題はこの先である.客車の前で一息つき,再び前進.
 すぐに道はダートとなり深い轍や落石が道一杯に広がる.車は上下に揺れ左右に斜めに浮き沈みを繰り返す.速度を下げ過ぎるとそのまま停まって動けなくなってしまうような所もあれば,速度を出し過ぎれば脱輪は必死となる箇所もある.しかし前回を思い出してみればまだ序の口である筈だ.道の両側にはだんだん雪も散見される.この時点でそれでは上は相当の積雪があろう.
 今回は所々で道の状況を写真に収めた.前回は目的地以外での写真撮影などをする余裕がなく,目的地までの道がどのような状態だったかは記憶に残るのみだった.それが車で道を登る事への不安にも繋がっていた.だから今回は目的地までの道や沿道の状況もなるべくカメラに収めることにしていた.
 道はカーブと勾配が続く.車の床は轍による路面の接触と石の突き上げの洗礼を受けている.明らかに路面から突き出た石が床下を激しく突いている音がする.また道に転がる石は車が差し掛かると路面と床下との間を転がっている.轍も石も,相当の大きさがあれば車が乗り上げることは必死だ.普通ならこのような床の低い車で走ることが無謀なのだ.高床式4輪駆動の車を所有していたとしても余程の用がなければこんな所は走りたくないであろう.だんだん道が雪に覆われ始めた.途中急カーブの中程の谷側が大きく崩落しており,道幅の10分の1程度ではあるが路面が欠損している.轍にタイヤを取られないように山側によって進む.
 カーブを幾つ過ぎたことか,峠を抜ける道と大津山に至る道の分岐点に到着した.峠に抜ける方の道はそうでもなかったが,大津山方面は道はほぼ完全に雪に覆われ,道も雪の隙間から石がごろごろしているのが見える.とてもこの先を車で進むことはできないと思った.仮に雪がなかったとしてもである.この地点から大津山まではそう遠くはなかった筈だ.元々歩くつもりで来ていたのだから,むしろここまで車で来れただけでも大分近付くことはできた筈である.車を二股の股の部分に置き,万一滑って行かないようにタイヤに石で止めをした.
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平貨車
雪の中の平貨車.
防火壁
雪の中の防火壁.
軌道遠望
雪の中に続く軌道.
小屋
入り口の広場の小屋.
道
下の方に続く道.

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