神岡探訪記


その4/2001年5月訪問(3)

 再び暗闇の中へ.この先はどうやら建物が半分地面からはみ出して造られているようで,足下の床の隙間が何故か明るい.筆者を含めて3人いるが,うち1人はこういった場所は初めてなので注意を促す.
 暫く建物と線路が続く.相変わらず例のつっかえ棒もしっかり屋根を支えている.裏を返せばつっかえ棒がなければ本来の柱では支えきれないということか.
 途中,谷側というか谷下に分岐する線路があった.急曲線なカーブとターンテーブルでほぼ直角に分かれている.しかも45度位の急勾配で下に降りている.線路の先は鉄の扉で塞がれていて判らないが,谷に沿って下まで降りているらしい.その先は残念ながら見ることはできなかったが,諸先輩方の写真によるとその勾配の線路に沿ってさらに線路が分岐し工場をなしている.
 さらに進む.今度は谷側に人が入れそうな扉があり,開けてみると目が眩むほど下の階下まで巨大な工場の空間があった.鉄製のしっかりした階段がありそこを降りてみる.3階建てのようになっていて,各階に大きな機械が設置されている.詳しくは判らないが,選炭器のようであった.一番下まで降りてみると,僅かながらレールが敷いてある.恐らく前述の急勾配の線路に繋がるものであろう.
 上に戻り,さらに進むと建物が終わり表に出た.表になる部分には車両はあまり置いていなかったが,所々に作業場のような建物が線路を覆っておりそこに車両が集結していた.線路は暫く表に出ていたが,またトンネルのように建物が現れる.しかし,その建物は,線路が入る部分が崩れており,そこに列車が進入することは不可能であった.筆者達も恐る恐る隙間から足を踏み入れてみる.いつ崩れても不思議はない.中には入れたが,すぐまた屋根が崩れており,さらに丁度崩れ落ちた下には「火」と書かれた貨車の列が.こういう場所で「火」と書かれているのは火薬を輸送する貨車であるのは常識である.既に廃坑になっているとは言え,万が一ということがあり得る.つまり,火薬が残されたままの場合も考えられる.念のため,その場から逃走する.  一応この建物は見終えたということで,車に乗り今度は先程の事務所の下に通じる道を行ってみる.事務所のすぐ隣に広場があり,何故か自動車のバッテリーが何千という数置いてある.後で知ったことだが,この土地を利用してバッテリーの再利用を行っているとのこと.さらにこの場所には元々グラウンドがあったという.
 5分程走る.少し平地になった空き地に,今にも崩れそうな木造の建物が山肌にへばり付いている.先程歩いた建物と造りは似ている.空き地といっても藪に阻まれその建物に近付くのは容易ではなかった.しかし建物の中には明らかに軌道が通っている.そういう雰囲気なのだ.建物はここで終わっていて,先端は木造ではなくコンクリートになっていて坑道然としていた.坑道の中は暗くて少し入ってみたが空気がひやりとしていて確かに坑道である.入るとすぐに左右に分かれている様子で,右が木造の建物,左はもう山の地面の中である.入口の横を,暗くて見えないが大量の水が轟音を立てて流れている.水の轟音というのはこういう場所では大変に恐ろしい.それだけで足がすくむ.こういう場所で万一流されては助かりはしまい.水に落ちれば二度と明かりを見ることはなかろう.
 さすがにそこから奥に入る勇気は筆者にはなく,遠巻きに見ている同行2名の元に戻り,今度は隣の木造の建物への入室を試みる.僅かに藪の薄くなっている箇所があり,足元は泥だが何とか行けないことはない.止める2人をよそに入室を強行する.僅かな小石やコンクリート片を足場に何とか建物の扉まで辿り着く.見守っていた2人もいつの間にか後を付いてきた.
 扉は半開きになっていて,入室を阻むものはなかった.案の定中に入ると線路があり,左手の坑道側は危険なので右側に進んだ.先程歩いた建物とは逆にこちらは左手が山になる.建物と線路は左に緩やかにカーブしている.少し歩くと,先程と同じような「火」と車体に書かれた貨車が連なって置いてある.その先は,と進んで行くと,その貨車の上の屋根が貨車に落ちている.何のことはない,筆者達は先程の線路を逆側から歩いていたのだ.しかしこれでこの建物の全容がある程度把握できた.
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神岡鉱山−栃洞
ホッパー.
神岡鉱山−栃洞
線路の終端部分.この板の下は谷.
神岡鉱山−栃洞
貨車.「火薬」とある.
神岡鉱山−栃洞
インクラインの上部終端部分.手前がインクライン.
神岡鉱山−栃洞
並ぶ線路.

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