神岡探訪記


その2/1998年11月訪問(2)

 未舗装になるともう山の中で,周囲は木々が茂り林道の様相を呈してくる.と,その時左手に小さな客車(*10)が放置してあるのを見つけた.非常に小さいが貨車ではない.木造で車体下部の側板は破れて骨組みだけになっているが原形は留めている.しかしこれも後どの位残っているだろうかと考えながら車を先に進める.
 林道は山肌を縫うようにして通っており,カーブでは慎重に通らないと谷へ落ちることは必至だ(*11).路肩も崩落寸前の箇所が続く.勾配もきつく,何の装備もしていない(勿論4輪駆動などではない)小さなこの普通乗用車(*12)には大変難儀な道である.
 何とか進んで行くと,だんだん路盤が土ではなく岩になり,轍若しくは大量の水が流れて路面に深い溝ができている.その轍と溝と岩による突起が作り出す高低差で車の底面を岩が擦るというより激突していく.床下から響く悲痛な衝撃音が2人を真剣にさせる.急勾配であるから何があっても止まる訳にはいかず,かといって速度を上げれば溝にはまるか谷へ落ちる(*13).どちらにしても道を登るしかない.
 所々に窪みがあり,さらに岩と溝により車は上下に揺れ左右に滑る.漸く勾配が緩くなった.そろそろ…と思っていた所にコンクリートの覆いが見えてきた.しかし我々はその手前で車を停めざるを得なかった.その覆いの部分が道幅一杯,長さ約5メートルに亘って水没しているのだ.車から降りて近寄ってみたが,思いの外深そうである.しかしここまで来て水溜まり如きで引き返す気もなかった.車に戻り,少し助走して水溜まりを駆け抜けた.もし水溜まりを徐行していたら車はその場で動けなくなっていたであろう.購入してまだ数週間の新車の床下は凸凹になり,車体は泥にまみれていた.
 水溜まりを抜け安堵して小休止.エンジンを噴かして多少なりとも水分を蒸発させる.上部軌道,つまり大津山坑洞は目前だ.気が付けば辺りは深い霧に包まれていた.1年前に来た時はここまで視界は悪くなかった.小雨も若干落ちてきている.
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霧の風景
共同洗面所か.手前には崖下に落とされて潰れた貨車が見える.
建物跡
何かの建物の跡.土台の大きさと中央の便器からして公衆便所だろうか.現在のここで用を足してみるす勇気はなかった.
坑道入口
大津山洞坑.
坑道内
入口から数メートル.一体どこに続いているのだろうか.現在は熊の住処という話しも….

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