太平洋炭礦太平洋炭鉱専用軌道(北海道釧路市)


 1992年3月2日/キヤノンEOS630QD

 ここはもう10年程前の冬に大学の友人らと流氷を見に来た際に立ち寄った.
 この時既に操業も下火になっており,訪れる何年か前に廃止になったと聞いていた.
 湧別や佐呂間で流氷を見た後友人たちと別れ,一人で釧路に向かう.3月初旬の快晴の日であった.釧路駅に下り,場所が良く判らなかったので駅前の案内地図で探す.元々大規模な専用鉄道であり,まだ現役の路線もあったので地図にも載っているであろうと思い探してみると,鉱山(正確には炭鉱なのだが)や工場と共に市街地の海寄りに鉄道の表示があった.有名な春採湖も発見.
 駅からは少し距離があるようなのでバスに乗る.10分程でそれらしい場所に着いたので降りる.何となく鉄道があるような雰囲気だと思いつつ辺りを見ると,住宅街の向こうの丘の下に線路と貨物列車が見えた.
 それはまだ現役の1067ミリ軌間の専用線で,目的の物ではなかったが折角なので少し見て回った.こちらは施設も車両も立派で線路も太いレールが複線で敷かれている.
 目的のナロー軌道は…と辺りを見ると,少し離れた場所に丘が見え,その麓から天辺まで如何にも鉱山施設という雰囲気の様々な建物が建ち並んでいる.しかもその丘の頂上には架線柱のような物が建っている.あそこに間違いないと道を探し丘を登る.
 未舗装の道を歩いて行くと採掘した土だか炭だか判らないがそういう物が山になっている作業場が現れた.頭上にはベルトコンベアが縦横に設置されている.事務所や作業場の建物の向こうに炭車のような物が見えたので入って行くと,広大な敷地に軌道が何本も敷かれている.架線は既にないが,架線柱や信号等の施設もそのまま.しかし使われなくなって久しいのか辺りは草むしている.軌間は610ミリと聞いているが,レールは太く立派である.
 軌道はこの丘の上でぐるりと一周し,エンドレスの一方であるようだ.しばらく見て歩くが,車両は炭車が2〜3両放置してあるだけ.名物ののっぽ機関車等は見当たらない.
 線路敷は歩けるようなのでそのまま軌道沿いに歩いて行くと,再び線路が幾つかに枝分かれし,そこには多数の炭車が留置してある.炭車に混じって蓄電池機関車のような物も見える.近付いて見てみると炭車には「教習訓練車」と書いてある.ここは作業の訓練をするための車両と施設なのであろうか.しばらく見て回る.
 線路はその隣の敷地にも伸びている.行ってみると工場のようで,建物の間を縫って軌道が張り巡らされている.この工場は操業しているようで,「日栄電気」とある.この炭鉱に関連した作業をしているのであろうか.
 筆者はここまでの規模の軌道はそれまでに見たこともないし,増して現役である.しかもこの工場は筆者の軌道の理想に当てはまっており,感動を禁じ得ない.工場は休みのようだったので早速失礼して工場の敷地内を見て回った.
 工場内には軌道用からそうでない物まで様々な部品や部材が置いてあり,それらの多くは軌道上の貨車の上に置かれていてまるで模型のようである.辺りに数え切れない程ある車両は小さな平貨車が多かったが,箱形の無蓋車や有蓋車もある.長物車も見掛けた.動力車は蓄電池機関車が1両あるのみだった.しかし敷地内には機関車用と思われるバッテリーが数十個も積まれて置かれていた.機関車もどこかにあるのではと思ったが,見た所それらしき車両はない.
 そこには1時間もいたと思うが,写真も撮り満足して丘を下りた.軌道は丘を下りて住宅街へ抜けているようで,途中住宅地の真ん中に掘り割りがありそこが軌道跡となっていた.線路はなかったが架線柱がずっと並んでいる.
 少し探したがその後の予定もあったので切り上げて釧路を後にした.例の機関車やその他の車両もまだどこかにある筈なのだが残念であった.次回いつこの地を訪れることができるか判らないが,それまで存在している保証はどこにもない.
 その後も国内唯一の炭鉱として操業を続けていたが,数年前に閉山になったと聞く.あの丘の上の施設や工場や車両達はどうなってしまっているのだろうか.

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太平洋炭鉱
事業所の全景.
太平洋炭鉱
炭鉱の事業所に隣接した「日栄電気」という会社.
太平洋炭鉱
 
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後方に釧路の市街地が広がる.
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太平洋炭鉱
車両は炭鉱よりもこちらに多く残されており,まだ現役の様子.
太平洋炭鉱
 
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太平洋炭鉱
唯一見た現役の蓄電池機関車.
太平洋炭鉱
 
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太平洋炭鉱
 
太平洋炭鉱
 
太平洋炭鉱
 
太平洋炭鉱
敷地を跨ぐベルトコンベア.軌道はこれに取って代わられた.
太平洋炭鉱
 
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太平洋炭鉱
 
太平洋炭鉱
良く知られているループ部分.
太平洋炭鉱
人車.
太平洋炭鉱
 
太平洋炭鉱
丘の下に現役の貨物専用線がある.こちらは1067ミリ軌間.
太平洋炭鉱
 
太平洋炭鉱
軌道の大半は撤去されていたようだが,残っている部分も.
太平洋炭鉱
「教育訓練専用車」とあるが,何の教育か.現役なのであろうか.
太平洋炭鉱
 
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太平洋炭鉱
 
太平洋炭鉱
住宅街の中の軌道跡.雪に埋もれながらずっと続いていた.
太平洋炭鉱
釧路駅前で写真を撮ってくれと声を掛けられた.

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