New Zealand Railways(Auckland・他)


 1991年9月/富士フイルムAUTO−8DATE

 番外編と言うべきか,今回は外国,ニュージーランドである.
 筆者は大学1年の夏,大学の語学研修という名目でニュージーランドに3週間程強制的に連行されていた.この期間,余りにも空き時間が多く,幾度となく鉄道を見に出掛けた.
 筆者が滞在したのは,同国最大の都市であるオークランド市.当時人口80万程度(2008年現在約120万)で,鉄道の要衝でもあった.滞在中は現地の一般家庭にホームステイとして世話になったのだが,その近所に駅があり,また語学研修のために通っていた地元の何かの専門学校のすぐ傍にも同じ路線の駅があった.更にバスで少し行けば街の中心部も近く,鉄道に接することは比較的容易であった.
 しかし,ニュージーランドの鉄道は衰退の一途を辿っており,当時でも路線や列車運行の縮小が全国で進められていた.写真にもあるが,最大都市であるオークランドの中央駅でさえ寂れており,駅構内では至る所で線路が取り外されている光景を目にした(なお,このオークランドの駅舎は,映画「戦場のメリークリスマス」において「バタビヤの日本軍司令部」の建物としてその外観が登場している).また,現地でも「鉄道は利用しない方がよい」とさえ注意を受ける程で,滞在期間中の平日は前述の専門学校に通学していたのだが,どちらも駅のすぐ傍であるにも関わらずバスを利用した.実際,鉄道を利用する人はそれ程多くなく,時間通りに運行されている様子もなかった(列車そのものが来ないことさえあった).
 列車の運行に関して筆者は当時のオークランド地区の状況しか知らないが,長距離と近郊とに系統が別れており,優等列車ではオークランドのある北島を縦断したり,海峡を渡って南島まで直行する夜行列車があると聞いた.なお,長距離列車には「Inter City」,近郊列車には「City Line」とそれぞれ愛称が付けられていたようだ.
 車両は,写真にあるように客車が中心で,電化路線はごく僅かで大部分の路線は非電化であり,外国で良く見掛けるようなディーゼル機関車が客車を牽いていた.少なくとも当時オークランド市内に電化路線はなく,勿論地下鉄やモノレールもない.
 ところで筆者達は平日に学校に通ってはいたが,午前中のみで終わってしまう課程だったので,午後には毎日のように街に繰り出した.筆者もオークランド市の中心部には大分詳しくなる程にあちこち見て回ったが,さすがに鉄道に乗ったり見学に行ったりした学生は他にはいなかったようだ(後で聞くと,通学のために鉄道を利用した者がいたそうだが,その者は特に鉄道ファンでなかったため「不便で時間通りに来ない」という悪い印象だけを持ち帰ったそうである).
 3週間の期間中,滞在先最寄りから学校最寄りまでの帰りの数駅の区間に乗ったのが数回,ある程度長距離(と言ってもオークランドから1時間程度だが)の乗車が3回,滞在先最寄りから近くの大型集合店舗のある場所まで何度か乗車した.1人での乗車が多かったが何度か親しい友人と乗ったり見学に出掛けたりした.また,筆者が鉄道を楽しんでいるという噂が知人の間で広まり,「1人では怖くて乗れないが興味はあるので連れて行って欲しい」と乞われて近距離区間に乗せてやったこともあった.この時は大雨の天気で(滞在期間中,春の長雨に祟られ,晴れた日は数日のみであった),オープンデッキの客車を行ったり来たりしていた筆者達はびしょ濡れになり,更に車掌に「危ないから座っているように」と諭されたりもした.日本の車両のように車両間を行き来するという造りになっていないし,また気軽にそんなことをしている人など皆無であったから注意されて当然ではあった.
 一度など,どこへ行くか判らない列車に適当に乗って帰ってくるという無謀をやったことがあった.オークランドを経って1時間して最初に停まった所で下車して逆方向の列車に乗って帰ろうと決め,駅に行きたまたま停車していた「Otahuhu」と行き先表示のある列車に乗り込んだ.その列車は普通料金で乗れたが,途中駅を幾つか通過した.日本でいうところの快速なのか,それとも各駅停車がそのような運転をしていただけなのか判らない.もしかすると休止になっていた駅があったのかも知れない.いつしか車窓には海が迫り,列車は海岸沿いを快走していた.途中には機関区のような施設や操車場を見ることができた.結局丁度1時間程度でこの列車の終点であるOtahuhuという所に着いてしまった.ここは海のすぐ近くにあり,港と連係して貨物を積み降ろしているようであった.構内は広く,客車より貨車が多く見られた.念のため帰りの列車を確認すると,1時間程後にここ始発のオークランド行きがある.それまで駅構内を見学して歩いた.因みに軌間が1067ミリであるので,何となく親しみを感じる.そう言えば客車も造りこそ欧米風であるが,小型なため大きさに関しては日本の車両のような雰囲気だ.
 あれから17年.彼の国にはついぞ訪問する機会がなかった.冒頭に記したように鉄道は衰退の一途を辿っていてどうなっているかと気に病むこともあったが,本稿を記すに当たり改めて調べてみると,その後同国の鉄道は一度民営化された後に再び国営化(運営は民間企業)され,車両や施設が改められたり運行も活発になる等,再び活気づいているという.喜ばしいことである.
 いつか機会を作り,当時の滞在先の最寄りである「Avondale」や幾度となく通ったオークランド,冒険乗車の終点である「Otahuhu」等の駅を訪れてみたいものである.

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Avondale(アヴォンダレ)駅.近くに有名な競馬場がある.
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Avondaleに進入する旅客列車.
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駅全景.無人駅だ.
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Avondaleの構内に放置の貨車.
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通っていた学校の最寄りであるMt.Albert(マウントアルバート).
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ここは街の中にある.
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Mt.Albertに到着する列車.
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このような外観の機関車は韓国でも見られる.
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比較的乗降客は多い.
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上下線で離合する.
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近くに巨大なショッピングモールがあるNew Lynn(ニューリン).
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映画にも登場したAuckland.
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Aucklandの構内.さすがに多くの発着ホームや側線がある.
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「City Line」とあるので近郊列車に使われる車両であろう.
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右端は荷物室か.
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当時親友だったH君と列車.
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荷物車か.日本のマニを彷彿とさせる.
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こちらは「Inter City」とあるので長距離列車か.その割に短編成.
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電源車であろうか.
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発車を待つ旅客列車.
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隣接する操車場.線路の撤去が進む.
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至る所で見掛ける荷物車.
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有蓋貨車.
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事業用貨車か.
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入れ換え用っぽい.
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長距離夜行列車の車両らしい.
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無蓋貨車.
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オークランドの近代的な街並みと対照的.
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廃車両群.
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向こうに港湾施設が見える.
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構内の外れに打ち棄てられた貨車の廃車体.
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列車に乗りに連れて行った同期の女の子.
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車両工場があるNew Market.
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Otahuhu行きの列車.
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日本のコンテナ列車のような編成の貨物列車.
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JR貨物にも似た謳い文句.
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Otahuhuへ向かう途中で.工場群に分岐する線路.
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海沿いに広がる操車場.
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Otahuhuの構内.
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夜行急行列車に使われる機関車らしい.
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貨車.
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廃車群.
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物置代用か.窓が破られている.
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このようなコンテナが至る所に積んであった.
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構内全景.
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Auckland行き上り列車.
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Aucklandに到着.
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帰国前夜に見たAucklandのヤードの夜景.
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