栗原電鉄(宮城県石越町・若柳町・栗駒町・鶯沢町)
1990年8月19日/キヤノンEOS630QD
晩年,「くりはら田園鉄道」とその名称を変え,先年廃止になった栗原電鉄である.
1990年の夏,仙台金華山を巡った家族旅行の帰路,筆者だけ単独で外れて訪れた.8月の下旬,残暑厳しい日であった.
仙台から東北本線の石越で下車,まず終点の細倉マインパーク行き単行列車に乗る.当線の沿線は穀倉地帯であり,一面田園風景が広がる.終点の少し前から山に入るが,あまり深くならぬうちに終点となる.
当線は本来は終点の更に奥にある鉱山からの産出物を運ぶ目的で敷設されたが,その鉱山が採掘を止め,また米等の貨物輸送もなくなったことから経営難となり,この頃から観光鉄道への転身を試みていた.終点は本来もう少し手前にあったのだが,そこを廃止してかつての鉱山により近い場所に駅を新設し,観光客誘致の試みとしていた.但し筆者が訪れた日は平日とはいえ夏休みの最中にも関わらず観光客らしい姿はなかった.
終点ではこれといって見るべき物もなく,駅前に使われなくなった車両が保存展示されているのみで,それを見て折り返しの便で戻る.
起点である石越の2つ手前に若柳があり,ここが当鉄道の車庫になっている.田園地帯を真っ直ぐに貫く街道に沿った街の中にある駅で,ひなびた駅舎と長閑なローカル線の車庫の姿があった.
路線の規模の割に多くの車両が在籍し,貨物輸送の名残の電気機関車も2両が入れ換え用に稼働しており,他に前述の1両を含め計2両の電機が保存されている.小さな移動機も1両あった.何れも綺麗に手入れがされている.
また,構内には廃車か休車か判らないが色褪せた電車が2編成と,貨車が数両.構内の外れには有蓋貨車の廃車体も2両分程.人影もなく,列車も時折しかやって来ないが,見ているだけでも飽きない風景である.
小一時間見て回ったり景色を眺めていたりしたが,さすがに暑く,またこの日のうちに帰宅する予定だったので,後ろ髪を引かれる思いで帰路につくことにした.上り列車は…と時刻表を見ると,1時間近く待たねば次の列車は来ない.ここで更に1時間時間を過ごすことも許されず,石越まで2駅とはいえそれ程長い距離に感じなかったこともあり,歩いて行くことにした.線路に沿って道路があるので,線路や風景を眺めながら歩くのもまた一興,と考えた.
しかしそれが命取りになった.この日はまさしく酷暑であり,歩いているうちにどうにも気分が悪くなった筆者は,丁度半分位来たところにたまたまあったショッピングセンターに涼を求めて立ち入った.近年でこそ暑い夏は珍しくなくなったが,この年の夏は現在の猛暑の始まりの年だったかと後年思った程に暑かった.因みにこのショッピングセンター,この時は開店したばかりで開店記念セール等をやっていたと記憶しているが,つい3年程前に知人との旅行の際に立ち寄ってみたら,閉店記念セールをやっていた.同じ8月下旬のことである.筆者にとってはたまたま立ち寄った2回が15年の月日を経て図らずも開店時と閉店時であり,何とも感慨深い思いがした.
しばらく涼んで気分もやや回復したところでまた歩き出し,目眩と汗だくの中で石越に辿り着き,仙台を経て帰宅した.ともかくも当線には暑さという印象が最も強く残っている.
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石越.右手に東北本線が走る.
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石越の構内.以前はもっと広かったのだろう.
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ポツンと置かれている電気機関車.
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上り列車.
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下り列車.
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駒場という駅.
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終点の細倉マインパーク.駅前には車両が保存展示.
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旧終点,細倉駅跡.
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若柳の車庫.
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休車か.
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入れ換え用小型機.
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電気機関車201号.
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203号.
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車掌室付き有蓋貨車.
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車両の入れ換えが始まった.
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廃車体.軽便時代のものであろうか.
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構内を望む.
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下り列車が入線.
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