古河機械金属久根鉱山専用軌道(静岡県佐久間町)


 1999年/キヤノンEOS630QD

 静岡県北部の天竜川に沿った所に小規模な鉱山がある.
 例に漏れず操業は随分前に止めてしまっているが,軌道が若干残されているとのことで友人と訪ねた.
 長野県の辰野から飯田線沿いに南下,幹線道路と天竜川に沿った大変判り易い所にあった.川沿いの崖の上を通る道路から川に向かって斜め下方に通じる道があり,そこが鉱山への入り口である.
 道はあまり良くはなく,前日降った雨で路面には雨水が流れている.少し下ると河原に細長い平らな空間があり,そこに事務所風の建物と円形の貯水施設が見えてきた.その手前に小川が流れており,古い苔生した橋を渡ると広場に出た.
 その橋の手前から軌道は始まり,奥へと続いている.道と言うかその細長い敷地に沿って軌道は続いているが,途中で途切れる.元々そこまでしかなかったのか或いは撤去されたのかは判らなかった.敷地は舗装はされておらず,軌道が終わってからもしばらく進むと塞がれた坑道のようなトンネルで行き止まりになっている.その敷地の山側に沿って用水路のような物がある.坑道の下の部分は塞がれてはいないようで,坑道からは大量の液体が用水路に流れ出ている.水ではなく液体だ.真っ黄色な液体が幅2メートル程の用水路にどうどうと流れている.まるで大雨の後の近所の用水路の如く,しかも黄色いので透明度はなく底など全く見えない.その液体は水が濁っているという程度ではなく,液体その物が黄色い.大量の水に大量の黄色い絵の具を完全に溶かしたような,そんな物が屈めば水面に手の届く水路に流れている.この液体の流れに誤って転落でもしようものなら,溺死するより先に何か他の原因で息絶えること間違いなしだ.この液体が一体どのような物質なのかは知る由もなかったが.
 事務所のある広場に戻り,他に軌道はないかと探すと,先程渡った小川にもう2本橋が架かっており,そこに線路が見えた.橋の上は色とりどりの苔や雑草で埋まっていて,車は勿論人が通るのも危なっかしい.線路は橋を渡った先で土に埋もれてしまっているが,以前この先に何かあったに違いない.橋の手前でも線路は土と藪の下に消えてしまっているので,どのような配線になっているのかも判らない.
 車両は見た所なく,坑道に行く途中の道端に車軸の付いた小さな車輪とそれに付随した台枠のような木片が転がっているだけであった.物の本によれば鉱車や機関車等があったとのことだがその姿は紹介されてはいなかったので想像のしようもない.
 隅々まで見て回ったが30分程度の訪問で現地を後にした.

 写真をクリックすると拡大します.
久根鉱山
軌道はここから始まっている.
久根鉱山
橋を渡ると事務所等がある.
久根鉱山
事務所前の広場を坑道側から見る.
久根鉱山
木製の台枠と車輪.車両はこれだけ.
久根鉱山
坑道口と用水路.水が黄色く濁っているのか,元々黄色い液体なのか….
久根鉱山
この奥に上の坑道がある.右隅の側溝には用水路とは別にきれいな水が流れていた.
久根鉱山
もう1本の橋.レールは苔と草に埋もれてしまっている.レールはこの先に続いているようだが橋の向こうで埋もれて判らなくなってしまっていた.



目次へ ホーム


(C)Rottem;1998-2024 Alle Rechte Reserviert. Rottem