日鉄鉱業赤谷鉱業所専用鉄道(新潟県新発田市)


 1999年8月/キヤノンEOS630QD

 やはりここも廃墟好きの友人と訪ねた.
 8月の暑い月曜日であった.関越自動車道から国道に入り,山の中に比較的近年閉山になった赤谷鉱山という鉱山がある.
 例によって碌に下調べもしないで来たため,取り敢えず赤谷村を目指して走った.この鉱山はやはり廃止になっている旧国鉄赤谷線というローカル路線の終点の奥にあるとのことで,まずはその赤谷線跡を探すことから始まった.さすがに国鉄線であれば跡といえどすぐに見つかった.終点まで行くと,何となく鉱山然とした雰囲気が漂ってはいる.
 国鉄線の終点と思しき場所から更に奥へ進む.段々山は険しくなり,道も細くなる.沿道には軌道跡らしき物が続いているのだが,確信が持てないままそれを辿って行った.しかし30分走っても鉱山らしき物はおろか軌道跡とはっきりいえる物も見えてこない.山も道路の両側に迫り,完全な山道となっていた.
 諦めかけていた時,沿道の山肌に何か人工建造物が見えたような気がした.石かコンクリートのような物だ.すぐに引き返した.
 それは本道から分かれた砂利道を少し行った山肌に存在した.夏草に覆われた山肌を,途轍もなく長い石でできた階段が上に延びている.こんな所に人工建造物が存在するとすればそれは間違いなく鉱山に関する物である.早速登ってみようとすると,暑い中当てもなく彷徨うことに疲れ果てた同行の友人は「ここで待ってる」と言う.
 ここまで探して何も見つけられなかったところへやっと見つけたのだ.筆者としてはこの上に何があるのかを見届けないでここを立ち去ることなどできない.階段はどう見ても朽ちており,崩れそうにまでは見えないが両側にあったであろう鉄製の手摺りは腐って全長に渡って落ちてしまっている.更に階段そのものも異常に幅が広く,且つ一段一段の奥行きは狭い.おまけに日常街中やビル等で我々が見る階段という物はある程度長くなると踊り場というのが設けられているものだが,それが一切ない.山の中にある神社の階段でさえ幾ら長くて有名でも途中に踊り場くらいはある.
 しかも下から見た限り階段の頂上には夏草に埋もれた山肌があるだけ.特に建造物等は見当たらない.苦労して登って行っても何もないばかりかどんな危険が潜んでいるかも知れない.
 しかし行かなければならない.下で待っていると言う友人を残し,階段を登り始めた.
 奥行きのない階段というのはこうも登りにくく危ないものか.手摺りもなく,ひとたびバランスを崩しでもしたら下まで落ちるであろう.階段の両側は背の高い夏草が茂っていて何が出てきてもおかしくない.
 猛暑の中登ること十数分,階段の終わりが見えてきた.階段の向こう側は岩肌が立ちはだかっているが,階段と岩肌の間には空間があるように見える.何かあるかも知れないという確信を持って階段を登り切った.
 やはりあった.階段の終点と山肌の間は幅2〜3メートル,長さ20〜30メートル程に平らになっており,左端は2つのトンネル,右端は草に埋もれて判らないが山肌に沿って向こうに続いているようだ.2つのトンネルからはそれぞれに細いレールが延びていて,それがその平らな場所に敷かれている.
 この場所は下からどれ程の高さにあるのか見当もつかないが,100メートルは登ったであろう.このような場所に軌道が存在したとは.
 その敷地に足を踏み入れて良く見てみると,どうやら線路は撤去作業中であるらしい.レールは無造作に切断され,傍らにガスバーナーとガスボンベが転がっている.しかもつい昨日まで作業をしていて今日は休み,というような感じである.右手の方は作業を終えているらしく複線のうち片方の線路はなくなっていて地面にその跡が残っているのが見えている.
 トンネルは断面が小さく如何にも鉱山軌道という雰囲気.道床やレールの間には湧き出した水が流れたり溜まったりしていてトンネル内と線路のある所は水浸しになっている.階段の正面辺りには山肌を掘ってその中に櫓が組んであり,廃材等で埋もれて奥も埋められているので定かではないがここもトンネルの口だったように見える.
 あまり長居は禁物だ.熊でも出たらどうしようもなくなるので下りることにする.階段は登りより下りの方が危ないが,ここはその極みである.支えのない階段というのはこうも危険なものか.十数分かけて下り切ると,猛暑の中友人は退屈そうに筆者が戻るのを待っていた.
 筆者が登っている間,パトカーが立ち寄り尋問を受けたという.友人は機転を利かせ「運転者が用を足しに出ている」と言ってその場をしのいだそうだ.パトカーが戻って来ると厄介なので足早にその場を立ち去った.この後も少し辺りを見て回ってみたがとうとう鉱山やその施設等を見つけることはできなかった.或いは見当違いな場所を走り回っていたのかも知れない.途中,道路脇の山肌に軌道跡と思われるトンネルのような物があり,中に入ると何か通路として使われているらしく空気が大変ひんやりとしていてしばらく涼んだ.奥に行ってみたかったが真っ暗になっていたのでそれ以上進むのは止めた.
 階段の上の軌道であるが,この時既に撤去作業が進行中だったとすると,もう跡形もなくなっているであろう.この地を訪問した諸兄の報告には,もっと大規模な軌道や鉱山施設が存在しているとある.再訪をと思っているうちに数年が過ぎてしまい,今はどれ程残っていることか.

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赤谷鉱山
長い階段.
赤谷鉱山
鉱業所への入り口か.
赤谷鉱山
軌道は殆ど撤去されていた.
赤谷鉱山
2つのトンネル.地面は湧き水で水浸し.内部には線路が残る.
赤谷鉱山
トンネルの内部.
赤谷鉱山
こちらも概ね撤去済み.
赤谷鉱山
3つ目のトンネルか?しかし中は行き止まり.

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