西武鉄道安比奈線(埼玉県川越市)
2007年1月9日/キヤノンPSA620
廃線マニアの間ではもう説明の必要がない西武鉄道安比奈線である.ご存じの通り廃線ではなく休止線なのだが,実態は廃線である.しかし廃線と言っても一般的には線路等の施設がこれほど残っている例は殆どなく,休止だからこそここまで残っていると言うべきか.逆に言えば,廃線になってしまえば原則として線路等は残されないのが現実なのだ.昭和40年代位までは全国各地にこの安比奈線のような廃線や休止線が散在していたことであろう.
能書きはさておき,この安比奈線にはこれまでにも幾度となく訪れている.筆者達の行動範囲内にあるため,手軽に立ち寄ったりできるという事情もある.
筆者と安比奈線との出会いは,小学生の頃,遠足等で観光バスに乗った際に時折通る国道16号で見かける謎の踏切と架線であった.当時はさすがに安比奈線の存在すら知らず,一体何の線路であろうという程度の認識であった.小学生当時は川越は遠い地であり,訪問するべくもなかった.
中学時代も同じように学校行事等で通る機会があったが,安比奈線という存在をはっきり知るのはもう少し後のことであった.大学に入り,同じサークルに鉄道好きの先輩がおり,「安比奈線に行ってみないか」という誘いがあった.筆者も以前から興味があったので早速その年の夏に2人で訪れた.
西武池袋線南大塚を下車,駅の裏手に回るとそれらしい線路があり,暑い夏の午後,先輩と終点まで線路跡(正確にはまだ「跡」ではないのだが)を歩いた.
終点まで歩いたが,夏であったため辺りは我々の背より高い雑草が生い茂っており,暑さと疲れも手伝ってそれ以上探索する気もなく,入間川を靴を脱いで渡り対岸の川越線笠幡から帰路についた.
その後しばらく忘れていたが,ここ10年ほどまた廃墟好きの同好者が出現したこともあり,暇潰し等に度々訪れている.しかし,夏季であったり,訪れるのが夕方近くであったりと,なかなか終点部をじっくり観察する機会がなかった.特に夏の間は終点部一帯は前述のように雑草の生い茂るジャングルと化しており,それまで容易に辿るのことのできた線路も土と雑草の間に消えてしまっている.埋もれてしまった所はどうしようもないが,草は冬になれば枯れる.それがあって,一度余裕を持って冬季に訪れてみたいと思っていた.
そこで先日,同好者と初訪問となる2名を加えて探索をした.
路線の中程に車を停め,徒歩でまず南大塚方面に向かう.我々はもう何度も行き来している場所なので特に新しい発見もなく,国道16号にぶつかる所で引き返す.今回のメインは終点部であり,訪問数度目の我々の心はすでに入間川の河原に飛んでおり,ここにあらず.
そのまま終点方面に歩く.当日は陽気も良く,歩きやすい.途中の鉄橋部分で地元民と思われる子供が2名,橋梁の内部を隠れ家にして遊んでいた.慣れているのか,十数メートルある橋梁上をスイスイと歩いていく.我々には怖くてとてもできぬ芸当だ.情けないが下の小川を渡る(その小川とて,子供等の仕業と思われる渡しブロックが置いてある).
有名な「森のトンネル」を枯れ葉を踏み締めながら過ぎ,道路寸断部分を経て終点部へ.雑草は枯れていたが,枯れても無くなるわけではなく,枯れ藪となって足下を覆い尽くす.それでも露出している場所から線路を辿ると,枯れ草の下に硬い二条の感触を得ることができる.
終点部には少なくとも4つの分岐した線路があったはずで,朽ちかけた架線柱の位置を頼りにレールを探す.筆者は底知れぬ藪の海に身を投げ探索する.午前中仕事帰りのもう1人もスーツ姿のまままとわりつく雑草の種もそのままにレールを辿っている.
ふと,藪の開けた場所があり,水溜まりと共に線路が複線で露出している.これは良い場所を見付けた.水溜まりと線路.まるで東南アジアのどこかのような風景だ.こんな風景はどこぞの専用軌道でもなかなか見られまい.
線路は藪の下で1本にまとまり,数十メートル行った所で行き止まりに.最終点部は藪と土に埋もれてはっきりしない.車止めらしき物もない.結局この時も全容を掴めぬまま,4人はまた線路を引き返した.
写真をクリックすると拡大します.
国道16号.線路は最近埋められた.
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踏切標識の土台か.
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後ろの真新しい住宅とアンバランス.
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近所の子供達.彼らには廃線もアスレチック施設.
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線路は埋められてこそないが,実際ここを列車が通るのは不可能.
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道路寸断部分で取り外されたレール.
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線路の間に生えた樹木.年月を感じさせる.
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藪の下に埋もれ,雑草の間から姿を見せるレール.
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水溜まりと線路.しかも複線.
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車止めか何か.
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線路はまた1本になり終点へ.
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廃線(休止だが)のある風景.
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家の裏にこんな風景が普通にあったらと思うと….
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